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Vol.13 大久保秀夫 11/11
 


教育が豊かにならなければ、
貧しい国は貧しいままになってしまう

●大久保さんは公益財団法人 CIESF(シーセフ ※カンボジア国際教育支援基金)を立ち上げていらっしゃいますよね。どうしてこのような活動をはじめたのですか?

 僕の友人に、カンボジアで地雷撤去をしている人がおりましてね。その方から要請を受けたのがそもそものきっかけです。カンボジアに関心を持ち、調べていくうちに、だんだん教育の大切さがわかってきました。カンボジアでは1970年代にポルポト政権による大量虐殺が行われ、知識人層が壊滅状態となりました。子供たちに教育を施してあげる人が誰もいなくなってしまったんです。

 ノーベル平和賞を受賞した国境なき医師団という団体をご存じでしょうか。その女性スタッフのひとりがCIESFにいるのですが、彼女が言うには、国境なき医師団の活動に悲しみを感じるときがあるらしいのです。

 どういうときかというと、命を救ったのに国が貧しいためにカラダを売らなければならず、結局エイズなどにかかって死んでしまうような子どもがいるという現実に直面したときなんですね。

 国が貧しいのは、教育が貧しいからなんです。教育が行き届いていないことに根本的な原因があるんです。だから、僕はCIESFを通じて、カンボジアで教育を復興させたいと思いました。国境なき医師団ならぬ、国境なき教師団をつくりたいんですね。

●日本にいると読み書きは当たり前のようにできるので実感しづらいですが、教育とはそれほど大切なものなんですね。

 豊かな教育を行えば国が栄える。これは歴史を見てもあきらかです。そして、日本には、優れた教育を行えるベテラン教師がたくさんいるんですね。そういう方々をカンボジアにどんどん派遣して、カンボジアの子どもたちに教育が行える現地人の教師を育てたいんですよ。なにしろむこうでは、中学校の教師が満足に分度器も使えなかったりしますからね。また、直接子ども100人を教えるより、教師100人を教えた方が、その教師ひとりひとりが100人の子どもを教えられるようになるわけだから、効果が高いじゃないですか。




●なるほど。すばらしいですね。たとえば、CIESFの活動を支援しようと思ったら、どのようなアプローチが可能なのでしょうか?

 なんでもいいですよ。たとえば、昔の高校の恩師などに、CIESFの活動を伝えてみてください。もしかしたら、その先生はすでに定年になってしまっているかもしれませんが、せっかくの指導能力を眠らせておくのはもったいない。ぜひ、カンボジアの教鞭に立ってほしいものです。

 また、活動にはお金が必要ですから、募金活動を興してくれるのもうれしいですね。チャリティコンサートやチャリティマラソンなどの企画を立てて、収益の一部をCIESFに寄付してくれたら、とてもうれしいです。ぜひ、カンボジアのために、いろいろな企画を立ててほしいですね。みなさんの協力をお待ちしていますよ。

<了>
Vol.13 大久保秀夫 10/11
 


有名だとか儲かっているかなどは、
企業の本質ではないんです

●社員のことのほかに、フォーバルが大切にしていることはどのようなことですか?

 事業の社会性です。僕が通信業界に飛び込んで感じたのは、この業界にはおかしな慣習がたくさんあるということでした。特定の会社が儲かるような仕組み作りに関しては上手なんだけど、一般の人々が利用しやすい状況を作っているかと言えば、そうではなかったんです。僕はそこに異を唱えたかったわけなんですよ。

 企業には、まず社会性が必要です。経済性を考える企業もたくさんあるけれど、じゃあ、儲からなくなったどうするのでしょうか。その分野に取り組まなくてもよいのでしょうか。企業がやらなければならないことは、人々が困っていることを解決することなんです。なんとしてでも解決するぞという意欲がないと、弱い会社になってしまいます。

 だから、就職や転職で会社を選ぶときには、儲かっているかとか有名だとかではなく、その会社がどんな社会問題に立ち向かっているかを見るべきでしょうね。儲かっている会社も、儲からなくなるときが来るかもしれない。有名な会社も、有名じゃなくなるかもしれない。本質を見なければいけないと思います。



●なるほど。それでは、就職、転職を考えるときは、まず気になる社会問題を発見して、そこにアプローチしている会社を探すといいかもしれませんね。

 そうですよ。アメリカで発表された就職先の人気ランキングベスト10には、2つのNPOが名前を連ねました。どこで自分の力を活かそうかと考えたアメリカの大学生が選んだ就職先には、大企業ばかりではなくNPOも含まれていたんですよ。大企業に就職すれば、それは高給取りになれるでしょう。でもね、そんなところは冗談じゃないって、NPOを選ぶ人がたくさんいるんです。

 マズローの5段階欲求ってありますよね。人間の欲求を5段階で表したもので、最初は生理的欲求からはじまります。そして、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求とだんだん質が高まっていき、最後は自己実現の欲求となるわけです。アメリカの学生たちの欲求は、最終段階に入ってきているんじゃないかな。日本の経営者もこれからはそういうアプローチをとらないと、いい学生を集めるのは難しくなるかもしれませんね。
 
●それは、フォーバルに面接に来る学生を見ていても感じることですか?

 僕は早稲田大学でオープン講座を開いているのですが、優秀な連中はすでにNPOやNGOに所属したりしていますよ。目線が違うなって思いますね。だって、いまの日本なら、がんばれば食べていくことくらいはできるじゃないですか。お金をたくさんもらって、それでどうするのとは思いますよ。お金がたくさんもらえるいい会社でよかったなんて言っているのはちょっと足りない大学生でね、優秀な学生はそういうところには行かなくなりますよ。

Vol.13 大久保秀夫 9/11

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社員に夢を見せてやりたいし、
出会ってよかったと思ってほしい

●大久保さんはずば抜けた営業力をお持ちですが、営業の秘訣を教えてください。

 僕の営業が優れていた点は、サービスの説明を2分以内で行っていたことだと思います。5分も10分もかからないと説明 できないようなサービスは受け入れられません。3分経つとラーメンができてしまうから、そっちに行っちゃうようなものです。 ラーメンができるまでに商品の説明ができないと。これは自分を売り込むあらゆる場面に当てはまるんじゃないかと思っています。

  僕の営業スタイルのもと電話機の販売をすすめた結果、5年の間に日本の市場は50%ひっくり返ることになりました。そしたら、 電話機市場は自由化が促進されて、最終的には誰が作っても、売ってもいい、という状況になりました。いま、誰でも好きな電話が買えるのは そういうことがあったからなんですよ。

●大久保さんの人生を変えた出会いには、どのようなものがありましたか?

  人生が変わったのかどうかはわかりませんが、出会いには恵まれていたと思います。まず第一に、いまこうやって会社を続けることができている理由は、 素晴らしい社員たちとの出会いがあったからにほかなりません。まぎれもなく僕の財産ですね。

 人生の中には、つらいこともあったし、嫌なこともたくさんありました。でも、そんなとき逃げずに立ち向かって行けたのは、社員や家族などの仲間がいたからですよ。 僕が逃げたら、いったい彼らはどうなるんだろう……、とピンチが訪れると考えます。人って弱いから、つい逃げ出したくもなるけれど、彼らのことを考えたら逃げるなんてできないよね。

かっこつけるわけじゃなく、やっぱりそう思うんですよね。まわりのみんながいてくれたから、ここまでなんとかやってくることができたんだなって。

●まわりの人がいるから強くなれるなんて、素敵ですね。

 だって、そうだと思わない? 人は、誰かのためにがんばろうと思ったときが一番力が出せます。自分だけのためにがんばろうとしても、それほど強く意思は保てないと思います。 家族のため、仲間のため、同僚のため、部下のため、社会のため。そう思うとパワーがでてくる。だから、人は、「活かされている」ものだと思うんです。

●しかし、お若い頃のがんばりをお伺いすると、自分のために相当がんばっていらしたように思うのですが、いかがですか?

 学生時代や若手社員のころは、言いたいことを言って、やりたいことをやっていましたね。でも、だからうまくいかないことも少なくありませんでした。会社を作ってから、 僕は変わった部分がありますね。一緒に働いてくれる社員に夢を見させてやりたいと思ったし、僕と出会ってよかったと思ってほしかった。

  会社を上場しようと考えたのも、社員にとっての誇りになるのではないかと思ったからです。社員の家族が喜んでくれるんじゃないだろうか、 親御さんが喜んでくれるんじゃないだろうか……。そんな風に考えたら、上場にも挑戦したくなったよね。

  フォーバルの社是には、フォーバルが大切にしたいと思っている方々のことが描いてあります。その順番は、社員、家族、お客さま、株主、お取引先となっているんですよ。 よく、顧客第一主義なんて言うけれど、サービスを提供するのはほかならぬ社員なんですよ。大事にされていない社員は、お客さまのことを大切にすることなんてできない。 だからうちは、まず社員を大切にする会社でありたいんですよ。

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Vol.13 大久保秀夫 8/11

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月に4件しか取れない契約を、
僕は日に4件取ってきた

●国内企業、外資系会社をやめて、いよいよフォーバル設立となるのでしょうか?

 そうですね。そんな経験を経て立ち上げたのが、現在のフォーバルという会社です。この会社を立ち上げることになった直接のきっかけは、 外資系会社を辞めて、NECの関連会社にいた先輩のところで手伝いをはじめたことでしょうね。その会社は、企業向けに電話機の販売を行っていました。 それまで僕は、電話は電電公社のものだとハナから思い込んでいたんですよ。だって、あらゆる電話が電電公社のものでしたからね。

 ところが、オフィスなどに電話を引く場合、最初の一台だけは電電公社のものを使わなくてはならないんだけど、あとは自由に選ぶことが できたんですよ。そんなこと誰も知らないから、全部電電公社の電話を使用していたというわけです。僕は、電話にもマーケットがあることを知って、 驚きました。

 当時、NECは2種類の方法で、電話のマーケットに参入していました。ひとつは、直接企業に電話機を売りに行く。もうひとつは、電電公社に納めて 、それを企業に借りてもらうという仕組みです。そして、直接企業に納品すればいいのに、電電公社に納めることばかりをやっていた。実際、NEC製の電話機 のほうが機能性は高いのに、ですよ。

●なるほど。中に入ってみて、はじめてそのようなおかしさに気づくのでしょうね。

 僕は企業に直接、NEC製の電話機の販売する担当に就きました。すると、1日4件くらい契約が取れた。電電公社のものより高機能で、料金も安いんだから、 当たり前です。ところが、その会社の営業は営業成績トップの人でさえ、月に4件くらいしか契約が取れなかったんです。1日、ではなく、月に、ですよ。

●それはどうしてなのでしょうか?

 なぜ、そんなことになってしまうかと言うと、営業の人はいちいち、「この装置がいくらでケーブルワイヤーがいくらで工事がいくらで、合計80万円になります」 なんてことをやっているものだから、経営者にうとましがられていたんですよ。

 僕の場合は、「こんにちは! NECの者ですが、社長、いま日本電電の電話機使ってらっしゃいますよね。それ、NECに切り換えると、こんなに機能がよくなって、 こんなに料金も安くなるんですよ」と説明したわけです。当然、「ほうほう、そりゃお得だね」となりますよね。そしたら、「だったらこっちに切り換えておきますね。 一台だけは、電電公社のものを入れておかなくてはいけないので、残り全部返してきますね」と言うと、「はいはい、じゃあ、頼むね」と、契約成立です。

●なるほど。わかりやすい説明ですね。

 僕は1日に何件も契約してくるものだから、ある日、不審に思った上司が僕の営業についてきたんですね。僕はいつものように説明をして、契約を成立させてみせました。 ところが、社内に戻ってみると、「あんな方法ではだめだ」と、その上司が言うんですよ。理由も何もわからない。だったら、自分でやるしかない、そう思って、 通信業界で起業したんですよ。

  これまで、日本の会社のよくないところも見てきたし、外資系の会社のよくないところも見てきた。その結果、僕はどうもろくな企業がないなという結論に達しました。 基本給をきちんと支払い、福利厚生も整えて、なおかつやる気のある人間はちゃんと評価する。そんな会社を、自分で作りたいと思ったんですよね。これが、僕が起業するまでのお話です。


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Vol.13 大久保秀夫 7/11

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入社したからには、
一番を目指すのが当たり前

●会社を辞めた大久保さんは、今度は外資系の会社にお勤めされるんですよね。

 ええ。旧来的な評価制度を持った会社に嫌気がさした僕は、今度はまったく正反対の外資系に転職することにしました。その外資系会社は、がんばれば50万円も給料がもらえると謳っていたので、僕は面接のときに「ホントですか?」と聞いたんですよ。だってそれまで、僕がもらっていた給料は10万そこそこでしたからね。そしたら「本当だ」と言う。それで今度は、「一番の高給取りはどんな人ですか?」と聞いたら、「麹町で勤務しているKさんだ」と言うんですね。

 僕はさっそく「Kさんに会わせてほしい」とお願いしました。入ったからには一番になりたいから、当然ライバルはKさんということになります。どんな人か知っておきたいから、会わせて欲しいと言ったんですよ。面接官は笑っていましたね。

 僕はKさんのいる麹町とは別のところに勤務することになりました。中途で入ったわけですが、部署のみんなに紹介されたときに僕はこう言いました。「悪いけど、ここにいる人たちは僕の相手じゃない。僕のライバルは麹町のKさんただひとり。Kさんはどうやら40過ぎのおじさんらしい。そんなヤツにトップ取らせているなんて納得がいかない。僕は20代半ばで、こっちのほうが若いんだから、絶対に負けない」。当然ですが、総スカンをくらいまして、上司にも「口に気をつけろ」と怒られましたね。


 

●大久保さんの暴れぶりは破壊的ですが、かっこいいですね。よっぽど自信がなければ、言えない言葉だと思います。

  だけど、入社して2ヵ月経つ頃には、ちゃんとKさんに次ぐ成績を収めるようになったんですよ。日本で二番。給料は一気に200万円になりました。それまで年収が200万円に届かなかったのに、月給が200万円になってしまったわけです。妻は震えてましたね、もちろん、僕もぶっ飛びましたが(笑)。

  でも、その会社、どこかおかしかったんだよね。人がどんどん辞めていくんですよ。なぜなら、「契約が結べない場合は給料なし」というシステムを採用していたからなんです。人ひとりが一日生きていくには、電車にも乗るだろうし、昼食もとるだろうし、最低でも2,3千円はかかりますよね。だから、仕事が取れないと、給料は実際のところマイナスだったんだ。僕は前の会社で人事をやっていたから、これはおかしいなと思いました。要するに、誇大広告で釣っておいて、売れる人間だけが生き残れる仕組みだったんです。

 そのうち僕にも部下がついたのですが、どんどん辞めていく。伸びそうだぞ、と期待をかける連中でさえ辞めてしまうんです。せめて基本給が少しでもあれば、もう少し状況も変わってくるのに、と僕は思っていました。

 そんなある日のこと、社長が「人を育てよう」という会議を幹部を集めて開いたんですよ。僕はまだ新入社員だったんだけれど、末席に加えてもらっていました。「何か意見はないか?」と社長が言うので、手をあげたんですね。そして、「社長は本気で人を育てたいと思ってらっしゃるんですか?」と、聞かなきゃいいことを尋ねてしまいました。すると社長が「当たり前だろう」と言うので、「だったらいい考えがあります。せめて5万でもいいから、基本給を出しませんか?給料なしではさすがに難しいです。私の部下には優秀なのがたくさんいます。食べていけるように育てるから、少しでいいから出してください」と僕は言ったんですよ。

●どこでも闘いますね。しかし、大久保さんのおっしゃることのほうが正論だと思います。

 ところが社長は突然、「そんなことをお前に聞いているんじゃない、このバカ者!」と怒り出した。こっちはただ、意見をいっただけなんですよ。それで、バカ者なんて言われたら黙っていられません。「こっちがバカ者なら、あんたは“大”がつく大バカ者だ!」と、やっちゃったんですね。「出て行け!」と言うので、すぐに辞めさせてもらうことにしました。人をちゃんと育てようとしない会社なんて伸びるわけがありません。だから全然後悔はしませんでした。

 もっとも、翌年、住民税の支払いがきたときにはびっくりしましたけどね。何しろ急に高給取りになっていたものだから、支払い額がえらい増えちゃった。おまけに、高い給料を払ってくれる会社は辞めてしまっていましたからね。このときは、さすがにちょっとパニックだったね(笑)。


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